Slob (Signet)のレビュー
モダンアートの制作現場に立ち会ったような感じ
体重四百二十二ポンド超、身長六フィート七インチの巨躯、IQ測定不能の天才、凄惨な幼児虐待を受けた無差別の殺人機械、被害者総数五百人!──「心[ハート]なき殺人者」ダニエル・エドワード・フラワーズ・バンコフスキーというグロテスクな怪物の創造と、情け容赦を知らない殺戮シーンの描写(ほんとうなら胸糞が悪くなるはずなのに、まるでモダンアートの制作現場に立ち会ったような感じ)がこの作品の、すべてとは言わないまでも魅力の大半で、あとは、イーディ(バンコフスキーに夫を殺戮された未亡人)とアイコード(バンコフスキーを追う捜査官)のぎこちない性愛の経緯と、バンコフスキー対アイコードの最後の対決が読みどころ。訳者解説に「シュールでアヴァンギャルドな文体」とある。言い得て妙。

80年代に積極的に発表されたこの手のジャンルを「スプラッタパンク・ホラー」と言うそうですが、さすが80年代という感じです。混純とした時代そのものという感じ。
ただ、非常にスピード感もあり、一気に読めるし、ただ破壊的なだけではなく、しっかりと根底に流れる児童虐待や性への曲がった価値観というものが表現されています。
ベトナム戦争から混純の80年代までの暗闇の一部を切り取ったような衝撃的作品。読む価値あり。